付言事項

遺言の内容を理解しやすくする付言事項という存在

遺言書は主に財産をどのように分けるか指定を記載するものですが、なぜ遺言書を書いたのかとか、なぜそのような財産の指定をしたのかなどの理由、残された家族へのメッセージを書かないと、せっかく書いた遺言の内容のとおりの相続が実現せず、かえって相続人同士のトラブルになってしまいます。 法的な効力はありませんが、残された家族が遺言の内容を納得し、相続手続きを問題なく進めるためにも付言事項は重要です。

目次

1.法定遺言事項と法定外の事項(付言事項)
2.付言事項のポイント
3.付言事項の記載例
4.まとめ

1.法定遺言事項と法定外の事項(付言事項)

遺言には、遺言書に記載することで法的効力があるもの(法定遺言事項)と記載しても法的効力がない付言事項があります。

法定遺言事項

①相続分の指定
法定相続人が複数いる場合、法定相続分の割合を変更したり、特定の相続人に指定することもできます。
例えば、法定相続分が妻2分の1、長男4分の1、長女4分の1の場合
⇒妻3分の1、長男3分の1、長女3分の1
⇒妻に全部を相続させる
②特別受益の持ち戻しの免除
生前贈与を相続分に反映させない旨の意思を表示できます。
③遺産分割方法の指定
相続財産について、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割といった分け方を決めておくことができます。
遺産分割の種類をご参照ください。
④推定相続人の廃除とその取り消し
法定相続人の地位がある場合でも、遺言書に対する虐待や重大な侮辱などがある場合、裁判所に申し立てをして、裁判所が認めれば法定相続人の権利を失わせることができることを推定相続人の廃除といい、遺言書に推定相続人の廃除が記載された場合、当然に廃除されるものではなく、遺言執行者から家庭裁判所に相続人廃除の申し立てを行い、これを認める審判が確定する必要がありますので要注意です。一方で、推定相続人の廃除の取り消しも可能。
⑤遺産分割の禁止
一定期間(最長5年)、遺産分割することを禁止することを定めることが可能。
⑥遺贈の設定
⑦遺贈の減殺方法の指定
遺留分を侵害するような内容の遺言書を作成した場合、どの財産から現在請求の対象にするかなどの遺留分減殺方法を決めておくことが可能。
遺留分をご参照ください。
⑧寄付行為の設定
⑨信託の設定
⑩子の認知
婚外子の認知をすることができます。
⑪未成年後見人、未成年後見監督人の指定
一人で未成年の子の親権者である場合、自分の死後の成年後見人、未成年後見監督人を指定することができます。
⑫遺言執行者の指定とその委託
自分の死後に遺言書の記載されている内容を実行されるよう、手続きを行う遺言執行者を指定できる。
⑬祭祀承継者の指定
慣習によって定めることが一般的ですが、遺言により指定することができます。
⑭遺言の撤回
遺言の全部又は一部を撤回できます。自筆要所遺言であれば破棄すればいいですが、以前公正証書遺言を作成した場合は原本が公証役場に保管されているため、以前の遺言を撤回する旨を記載することで、新たな遺言を作る必要があります。

2.付言事項のポイント

遺言書がないと、相続人全員で相続財産について話し合い、しかも相続人全員の同意がない限り、相続財産の名義変更ができないことから、遺言書の最大の目的は、相続財産の処理方法を事前に決めておくことになります。しかし処理方法だけで、残された相続人がその遺言に書かれた内容に納得するかというと必ずしもそうではありません。付言事項は、残された相続人らに、残された家族がこれからどうあって欲しいのか、家族への想い、感謝、遺言書を書いた経緯、なぜこのような処理方法にしたのか、などを遺言の内容を記載した後に書くことで残された家族に想いが伝わり、遺言書に書かれた内容が実行され、相続トラブルを防ぐ効果があります。一方で、否定的な内容はできる限り記載すべきはありません。

3.付言事項の記載例

<付言事項の例①> 
生前に私と同居し、われわれ夫婦の老後の面倒を、長女の○○が一身に引き受けてくれていたことは、皆も理解しているとおりである。 長男の○○、次男の○○は、ともに独立し、相応の生活ができていると聞いている。 また、長女の○○の身体が弱いのは皆もわかっているであろうし、寝たきりのお母さんの看病を○○が本当によく見てくれていたことは、皆も知ってのとおりである。
上記を考慮し、自宅については妻○○に残し、その他の一切の財産を長女○○に継がせるため、本遺言をした。長男の○○、次男の○○は、本遺言の趣旨をよくよく理解し、了解の上、遺留分を主張することなく、これからも互いに助け合い、末永く仲良く暮らすことを切に希望する。
よろしく頼む。

<付言事項の例②>
生前妻には感謝してもしきれない。自分が亡くなった後も信頼する子供たちにはお母さんの面倒をみてほしい。妻には住む家と金銭を、子供たちにはお母さんの面倒を見るために金銭を相続させることにした。妻、〇〇、〇〇、今までありがとう

<付言事項の例③>
妻〇〇が亡くなった後、私のことを献身的に支えてくれた長男の嫁〇〇さんには大変な苦労と負担をかけてしまいました。そのことは、長女〇〇も次女〇〇も知っていると思う。〇〇が亡くなった後、私が幸せに生きて来れたのは、子供たちが支えてくれたことと長男の嫁〇〇が一生懸命支えてくれたことだ。長男の嫁〇〇さんには少ないですが私の財産の一部を残したいと思い、遺言書を作成しました。長男の嫁〇〇さん、ありがとう。長女〇〇、次女〇〇、ありがとう。どうか揉めることないようお願いします。

4.まとめ

ここまで付言事項について記載した方がよいことを説明してきましたが、実際現場にいる専門家として付言事項によって相続トラブルを回避した経験があったからこそです。とはいえ、どうやって書いた方がいいか分からない方も多くいらっしゃいます。当相談室では、遺言書の作成と合わせて付言事項の作成のお手伝いをさせて頂きます。

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